新型ゴルフ、プレミアムの民主化が始まる!
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:中野 英幸
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:中野 英幸
正直、書きたいことが山ほどありすぎて、どこから手をつけていいのか困っている。ゴルフ7はプレミアムカーであり、ベーシックカーであり、エコカーであり、哲学であり、歴史であり、未来であり、テクノロジーであり、それらが渾然一体となった「人とクルマとの理想的関係」を明確に指し示している。ある意味、我々が普段考えている「クルマ」という存在を遙かに超えたクルマなのかもしれない。
というわけで、まずは7代目となる新型ゴルフ、すなわちゴルフ7のプレゼンテーションのなかで、僕がいちばん衝撃を受けた「言葉」から紹介していこう。「ゴルフ7がもたらすものは、プレミアムの民主化です」、「我々は、心地よいものに囲まれて生活することの素晴らしさをより多くの方にお届けしたいのです」(技術開発部門トップ、ドクター・ハッケンベルク氏)
74年に初代が発売されて以来、ゴルフは常にFFハッチバックカーのベンチマークであり続けてきた。それは「新型を開発するにあたって参考にしたライバル車はいません。我々が狙ったのは、ゴルフ6を超えることだけです。なぜならこのクラスは“ゴルフ・クラス”なのですから」という現場の開発エンジニアの言葉にもはっきりを現れている。
聞きようによっては傲慢だ。鼻持ちならないと思われても仕方がない。しかし、スペックを知り、実車を眺め、触れ、乗り込み、走り出す……そんなプロセスを通して、彼らの物言いが傲慢とはほど遠いものであることに気付いた。そこにあるのは揺るぎない自信とブレない信念に裏打ちされた、最高のプロダクトへのこだわり。プレミアムを民主化し、より多くのユーザーに上質なクルマを提供したいという真摯な想いは、傲慢とは正反対ですらある。
ベーシックカーのベストセラーであるゴルフに対し「所詮はドイツ製の大衆車でしょ」という人もいる。たしかにそれは半分は当たっている。けれど、彼らが考える大衆車とは、安くて壊れなくて燃費がよくてそこそこ広ければいい、という日本の大衆車とはまったく異なる。わかりやすく言えば、クラウン並みの上質感へのこだわりがあるのだ。VWのあるエンジニアの言葉を借りれば「先進国に暮らす人に相応しい上質なモビリティを提供すること」が、初代から連綿と続くゴルフのコンセプトなのだという。
もちろん、途上国の人々のために安くて壊れないクルマを提供することもビジネスモデルとしては大きな説得力を持っているし、理念の崇高さはいずれも同列だ。しかし、日本という豊かな国に暮らす日本人のクルマ選びまでもが、上質さを求めない方向にどんどんシフトしてきていることに、僕は一抹の寂しさを感じている。
ゴルフ7は、そんな状況に強烈なアンチテーゼを投げかける存在となるだろう。全長4265mm(先代比+55mm)というコンパクトなボディに、飽くなき質感へのこだわりと最新のテクノロジーを封じ込めたゴルフ7には、いったいどんなサプライズが隠されているのだろうか?
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